屋外に設置された道路標識は経年変化により視認性の劣化が起こります。特に夜間の視認性については、昼間に比べ劣化が顕著にあらわれてきます。夜間の反射輝度を具体的に数値化することにより、その劣化具合が客観的にわかるようにデジタル画像による解析方法で評価してみました(写真1)。視認性については、別表1の様に輝度値が35cd/m 2であればほとんどのドライバーが標識としての読みやすさと判読可能との認識を示しています。
先に述べたようにデジタル画像を解析して設置後まだ新しい標識(写真2)と、設置後数十年が経過した標識(写真3)との輝度を測定してみます。設置後まだ新しい標識(写真2)では、写真のように平均白色輝度値が31.8cd/m 2とほぼ合格ラインを示しているのに対し、十数年を経過した標識(写真3)では、平均白色輝度値が2.6cd/m 2と非常に暗くなってきていることがわかります。別表1で見ると5cd/m 2以下の標識は、非常に読みづらくほとんどのドライバーが「標識として良くない」と考えていることがわかります。
注)輝度の測定値については、それぞれの現場の周囲環境によっても違ってきます。
(背景輝度1~17cd/m 2の場合)
白色輝度 [cd/m2] |
成人ドライバー | |
判読距離 | 読みやすさ | |
5 | ゆとり時間平均0.8秒 消失点までに90%強が読める |
75%の者が標識として良くない |
10 | ゆとり時間平均1秒 95%の者が読める |
丁度半数の者が良くない |
35 | ゆとり時間平均1秒 ほぼ全員が読める |
丁度半数の者が良くない |
200 | ゆとり時間平均2秒 最もよく読める明るさ |
最も読みやすい明るさ |
1200 | ゆとり時間平均1.7秒 | 良くないとする者が 10%程度出てくる |
写真2(解析写真)
写真3(解析写真)
写真4
近年、市町村合併に伴い標識の行き先案内の地名が変更となり、あて板方式による部分補修が増えてきています。古い標識に新しい補修板を貼り付けると、その輝度差はどのようになるか測定してみました。(写真4)既設部分の白色平均輝度値は2.71cd/m2に対し(図1)、補修部分の白色平均輝度値は5.92cd/m2と2倍強の差があります。(図2)
注)測定した標識は部分補修後数年が経過した標識です。
図1(解析写真)
エリア | 白色 |
1 | 2.91 |
2 | 2.81 |
3 | 2.81 |
4 | 2.82 |
5 | 2.33 |
6 | 2.59 |
平均値 | 2.71 |
図2(解析写真)
エリア | 白色 |
1 | 6.44 |
2 | 6.22 |
3 | 6.22 |
4 | 4.67 |
5 | 5.60 |
6 | 5.85 |
平均値 | 5.92 |
これまでの輝度測定結果から見ると、設置後10年以上経過した標識板は反射性能の劣化により夜間の視認性が悪く、ドライバーにとっては非常に見えにくい標識であることがわかります。また部分補修した標識は、その輝度差が大きく夜間時のドライバーにとっては補修部分が目立ってしまい、他の部分は判読できない可能性も考えられます。道路標識としての機能とドライバーの安全を考えた時、古い標識や補修した標識は計画的な取替が必要であると考えられます。