弥富市で行った
交差点での路面標示による
交通流の改善事例
年代別に「運転継続時期」をアンケート調査した結果(表1)をみると、年齢を重ねるにつれて“継続希望年齢”は上昇しており、高齢になるほど「車が生活上欠かすことができないアイテム」と認識されていることがうかがえます。
表1 「運転継続希望年齢」に関するアンケート
(社)日本自動車工業会「高齢社会と道路交通環境のあり方についての提言」より
60歳未満の現役世代では、体力的にも自信があり公共交通手段を用いることで車の使用に必然性が薄いため、72歳を運転継続限界と考えています。しかし年齢を重ねるに伴い、限界年齢も上がり80歳以上に引き上がっています。
高齢運転者の「運転理由」もアンケート調査されており、その結果をみると、高齢層ほど「買い物」「通院」「送迎」といった“生活に密接した移動手段”として自動車が使用されています。ちなみに「行楽などのレジャー」での自動車の利用は、年齢層が上がるほど減少しています。
交通環境に対する高齢者へのバリアを「事故への危険性」(以下「危険性」)として捉えてみると、身体能力の低下による交通環境における軋轢から生じるものと考えます。
この軋轢は、
の二つの要素を主なものとして挙げられます。
図1 車両に衝突された歩行者が死亡する確率
国交省「自動車の走行速度の低下による
交通事故の低減効果等」より
右のグラフは、事故の危険性を速度との関係で表したものです。
身体能力の低下した高齢運転者にとって、自己防衛的運転による低速走行で「阻害迷惑運転者」となる場合が見受けられます。
高齢者の運転能力の低下、ブレーキの反応テスト結果を見ると、若年運転者と高齢運転者の間に明らかに違いがあり、危険回避能力の低下ともいうことができます。また、高齢運転者の持つ「潜在的危険性」とも考えることができます。
高齢運手者にとっての高速運転は、身体能力の低下を補うために「強度の緊張」を強いるものであり、潜在的危険性を高齢運転者にとっての「バリア」と考えることができます。
高齢者の認知能力の低下は「視界の狭窄化」や「目の霞み」「色彩認知能力の低下」など視力にかかわる認知能力と「音の認知能力の低下」によって、標識の「見落とし」や「錯誤」、「警笛音の聞き逃し」などを生みだし、事故を誘発させる危険要素の増大へとつながります。
したがって、高齢運転者は「認知能力の低下」を自覚することで、「強い緊張」を強いられます。このことから、高齢運転者の認知能力の低下を交通環境への順応面からみると「バリア」と考えることができます。図2は、色彩の「見にくさ」を年代別に調べたもので、高齢者の見にくさの特徴を知ることができます。
図2 年代別「見にくい色」の種類
自動車安全運転センター「運転環境が運転行動に与える影響・・・」 より
※この調査の中で高齢者の視覚疾患(白内障・緑内障など)の人は30%以上存在していた。
「信号・標識・歩行者」の「見にくさ」を「天候・時間帯」に分けて調査しています。その結果を見ると、60歳以上の高齢者では、〈夕方から夜の降雨時での見え方〉は以下のようになっていました。
合わせて50%以上の高齢者が見にくく感じています。
この結果を見ると、歩行者が見にくいと答えている人が多く、視野の狭窄化や視覚疾患による視力の低下、色彩識別能力の低下などが原因として考えられる。
社会の高齢化で高齢運転者の占める割合は、今後増々増加することが予測されております。高齢者の住環境、とりわけ移動手段が現況と変わらなければ、高齢運転者数の減少は望めません。
さらに、運転技能の低下した高齢運転者の増加は、交通環境における安全上の脅威をもたらします。しかしながら、生活に根差した移動手段である自動車を放棄するには、代替の移動手段の提供が不可欠となります。
高齢運転者の自動車利用の実態調査では、生活に必要な移動手段であって、長距離・高速での利用は限定的です。
運転能力の低下に合わせた交通環境(バリアフリー)を生活圏に創造することで、高齢者の生活に「安全・安心」をもたらすことができるものと考えます。
求められる「運転能力の低下に合わせた交通環境(バリアフリー)」の内容は、次の二点です。
小牧市 ゾーン30の入り口部
稲沢市 速度抑制施設
岡崎市 車道線形の屈曲化
稲沢市 交差点カラー化
西尾市 路側部のカラー化
小牧市 横断歩道の注意喚起(カーブ部)
新城市 急カーブ注意喚起
名古屋市 路肩のカラー化
弥富市 導流線のカラー化
岡崎市 交差点導流部
カラー化